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2025.04.04 UPDATE!
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眠りとマングローブの繋がり
-「わたし」と「地球」のウェルビーイング-

「いい眠り」をすると、インドネシアにマングローブが植えられる。前回に続き、パラマウントベッドがインドネシアに開設した「PBマングローブの森」について、担当者の林貴道さんのインタビューをまじえながらさらに深掘りします。睡眠モニタリングアプリとマングローブがどう結びついたのか。経緯やプロジェクトにかける想いをお話しいただきました。

植林してすぐのマングローブの苗。
インドネシア共和国西ヌサ・テンガラ州、バラット村の「PBマングローブの森」にて

「PBマングローブの森」のPBは意思表明。

2025年3月現在、「PBマングローブの森」はインドネシア共和国内の4箇所のサイト(敷地)に開かれています。場所を区別するためにそれぞれの森が所在する村の名前が付けられ、バトゥレア村のサイトなら「バトゥレア PBマングローブの森」、バラット村なら「バラット PBマングローブの森」と呼ばれています。
まずはこの「PBマングローブの森」というネーミングについて、このプロジェクトの立ち上げに当初から関わり、現在も担当されている経営企画本部事業戦略部の林貴道さんにお伺いしました。

「PBとはパラマウントベッドの略です。森の名前にきちんと企業名を入れることにしました。企業の活動として“植林”を決めた時に『これはしっかり腰を据えて、長く関わっていかなければ意味がないな』と思いました。すでに行われている植林活動に形だけ参加するような関わり方ではなく、今回のプロジェクトは森を一から作り上げてゆくものです。当然時間もかかりますし、きちんと見届けないといけない。当社の社員も現地の方々も、そして本プロジェクトの核である「Active Sleep」をお使いの一般ユーザーの方々にもそのことをきちんと伝えたい、そういう想いから『PBマングローブの森』と名付けています。パラマウントベッドが責任を持って関わっている森ですよ、という意思表明です」

2025年3月現在の「PBマングローブの森」の所在。
4つのサイトは、広大なインドネシアの南部、スンバワ島に点在する。

林さんの話にあるように、このプロジェクトはパラマウントベッドの電動ベッド「Active Sleep BED」のための睡眠モニタリングアプリ「Active Sleep App」が大きく関係しています。(詳しくはこちら
アプリ内のポイントシステムと現実の森が連動し、ポイントに応じてマングローブが実際に植林される仕組みです。半年に一度、ユーザーのポイントが集計され、そのポイントに応じて現地のマングローブが植林されます。
そもそもどういう経緯で一般ユーザー向けの「アプリ」と「マングローブ」が結びついたのでしょうか。

なぜ、マングローブなのか?

「この話には当社のメーカーとしての背景があります。小さくないメーカーとして、環境問題には常に関心を持っています。地球全体の環境という大きなテーマはもちろんのこと、お客様の環境、働く我々の環境、そして工場や営業所が実際に立地する周辺の環境など、常に『環境課題の解決に貢献したい』という意思を持っており、実際に様々な活動もしています。この環境課題への貢献というのが今プロジェクトの大きな背景です。
実は2020年、当社はこれまでの医療や介護といった分野から、一般のユーザーの方々へと視野を広げ『健康』事業という新たなカテゴリーに挑戦することになりました。つまり、企業の姿勢や取り組みを知っていただきたい対象が一気に広がったんです。環境問題についても何かもっとダイレクトに、かつ大きく寄与できる方法はないかいろいろ探しました。その中で出会ったのが『マングローブの森』を植林する、という活動だったんです。本当にいろいろ調べ、いろんな方々や団体とお会いしました(笑)」(林さん)

マングローブ植林の決め手はどこにあったのか、もう少し詳しくお伺いしました。
「まずはなんといってもCO2削減量です。マングローブは日本の森林の約2倍の吸収量がある。メーカーとして、カーボンニュートラルの観点からこの数字のインパクトは重要でした。また当社はインドネシアに工場を持っております。国内外の工場立地環境についても当然関心を持って接している中で、『インドネシアにマングローブの森を植林する』という話はまさに理にかなっていました。次に、この植林がかなりユニークだったという点があります。“シルボ=フィッシャリー”という、とてもユニークな植林方法なんです」

立ち上げから本プロジェクトに関わっている経営企画本部ストラテジーグループの林貴道さん

エビを放流しながらマングローブを育てる

林さんが話されたシルボフィッシャリーとはどういう植林方法なのでしょうか?
これは、インドネシア政府認可のもと現地でマングローブ植林保全を行っているワイエルフォレスト株式会社が取り組んでいる植林の手法です。
ただマングローブを植えるだけではなく、放棄された養殖池跡地や生産性が低下した養殖池にマングローブ林を植林し、その周りの水路でエビや魚を養殖しながら、持続可能な水産・森林経営を行うという「自然共生型の養殖方式」です。植樹・育樹により地球温暖化の防止に貢献しながら、水産養殖で地元住民の生計向上にも寄与するという、ユニークな仕組みなのです。
様々な“環境貢献”の手法を探る中で、プロジェクトチームが出会ったのがこのシルボフィッシャリー方式によるマングローブ植林でした。何度も協議を重ね、ワイエルフォレストと共同で、2021年3月より植林活動をはじめました。

シルボフィッシャリー方式による植林方法の概念図
植林直後のバトゥレア村の様子。外周の土手、養殖用の放水路、中央のマングローブ植林がよくわかる

「すべての人の健康」と「地球の健康」を結びつけたい

では、企業として環境問題に大きく寄与したい、という想いと一般ユーザー向けの「アプリ」はどう結びついたのでしょうか?
さらに林さんにお伺いしました。

「このマングローブ植林のもとになるアプリ内の独自ポイント、アプリ内では『眠りのポイント』と呼んでいるのですが、実はアプリのリリース時にはなかったものなんです。当初は純粋に当社の電動ベッド『Active Sleep』専用の睡眠モニタリングアプリケーションでした。先ほども言いました通り、それまでの医療や介護の分野から踏み出して、『健康事業』としてパラマウントベッドが一般の方々へと対象を広げた製品になります。一般の方々に広く製品やアプリを使っていただこうとすると、当然そこにはこれまでの医療や介護現場とは異なる『ユーザー体験(=UX)』が求められることになります」

もう少し言葉を選ばないとすると、一般市場では「より、付加価値のある」製品が必要であり、「より積極的に使ってもらう」仕組みが必要ということになります。そこで、アプリ内のユーザー体験として、ポイントシステムを加えることになりました。

「『Active Sleep App』ではハードと連動して、ユーザーの様々な睡眠データを取り分析します。そこで睡眠の質に改善がみられたり、あるいはその日の眠りに対するアンケートに応えるとアプリ独自の『眠りのポイント』が付与され、このポイントがマングローブ植林へと変換されるのです。
難しかったのは、『Active Sleep App』がゲームではないということです。あくまで皆様の睡眠状態をモニタリングしてサポートする健康のためのアプリです。もっと積極的にこのポイントを活用してサービスや製品の特典とする、などの意見がなかったわけではありませんが、それだと無理やり健康を押し付けることになってしまいます。でも健康は競争ではありません。すべての人を対象とした健康アプリの、ユーザー体験のモチベーションに相応しいインセンティブ(励み、動機、刺激)として何かいいものはないか、あれこれ検討していたある時『あ、マングローブ植林と結びつけるのがどうだろうか!』という考えに至りました。ウェルビーイング for “わたし” を気に留めて過ごすと、ウェルビーイング for “地球” に繋がっている、このくらいのストーリーが心地いいのではないか、と。だからあえてポイント取得を煽(ルビ:あお)るようなデザインやUI(ユーザーインターフェース)にしていないんです。毎日心地よく眠っていただき、結果的に溜まったポイントが少し遠い国の森になってゆく、そういう雰囲気になるように注意を払いました。本当は<ポイント→マングローブ本数>の変換レートなども公開して、もう少し関係を可視化しようとも考えたのですが、そういう理由で今のところは結果だけを半年ごとに表示するだけにしています」

2025年3月現在、79,450本のマングローブが植林された

アプリ内には「通算ポイント」と、半年ごとにリセットされる「期間ポイント」が表示され、さらに「あなたの眠りで、これまでに10本(のマングローブが)植林されました。」という“マングローブ実績”がイラスト付きで表示されます。普通に眠っていると年間5本くらい、多い方だと40本近くが植林される計算です。
林さんによると、「当面は変換レートを公開したり、他の(マングローブ植林以外の)アウトプットを設定する予定はありません」とのことでした。

植林時の様子

まだ始まったばかり

最後に、林さんに今後の展望などについて語っていただきました。

「このプロジェクトは始まってまだ数年です。マングローブ植林は始めてから数年経ちますが、エビや魚の養殖に至っては『やっと放流した』という段階です。とにかく長い目でじっくり腰を据えて取り組むべきプロジェクトだと考えています。このプロジェクトがユニークなのは、マングローブ植林=地球環境への貢献、エビや魚の養殖=地域経済への貢献、という複合的な社会貢献になっている点です。実は日本からも社員が数人植林の手伝いに体験として行っていますが、ぜひ全員一回は行くようにしたいですね。現地インドネシア工場の方々も全員参加して欲しい。ゆくゆくはここで育った海産物をみんなで食べるとか、そういう交流もやってみたいです。30年は続けますよ!」

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