介護する人と介護を受ける人、双方の負担を軽減したい
介護付き有料老人ホーム「トミオ印西コスモステラス」は、千葉ニュータウンの幹線道路から少し入った静かな住宅街の一角にあります。この施設でケアマネジャー※として入居者やそのご家族、介護職員や医療職員とコミュニケーションを取りながらケアプランを取りまとめているのが、今回インタビューを行った曽我敦子(そが・あつこ)さんです。
パラマウントベッドが提供するトイレの排泄自動記録システム「トイレDIARY」。
トミオ印西コスモステラスに、トイレDIARYの導入を決めたのは、ケアマネジャーとして勤務する曽我さんです。
どのような想いや経緯でシステムを導入することになったのか、そして、導入して変化したことや気づいたことなどを、現場の方の目線で話していただきました。ケアマネジャー曽我さんのインタビューと施設見学の様子を中心に、コスモステラス施設長の種市勝さん、開発者であるパラマウントベッド三重野勤さんへのインタビューを交えながら、全3回にわたってレポートします。
※ケアマネジャー:都道府県が認定する介護支援専門員の資格。介護福祉士、看護師などの実務経験を経て「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格し、さらに研修と演習を修了した者に交付される公的資格。より実務的に介護支援を担う介護福祉士・社会福祉士に対し、介護サービス全体を組み立てる専門家。コーディネーターとしての役割が求められる。ケアマネと略されることも。

介護付き有料老人ホーム
「トミオ印西コスモステラス」
排泄自動記録システム「トイレDIARY」とは
トイレDIARYはパラマウントベッドが提供するトイレの排泄自動記録システムです。
トイレの入室や着座などをセンサーが検知し、施設内の端末や職員のスマートフォンに通知。さらに排泄内容を職員に代わって記録するシステムです。
排泄の状態をチェックするという、トイレ利用者のプライバシーに関わる部分をセンサーとAIにより自動化。このシステムにより、利用者の尊厳を守りながら、職員による排泄ケアの負担の軽減が期待できます。
センサー類は既存の便器に取り付けが可能で、下図にあるように、トイレ内に設置した制御ボックスにてAIが「排泄状態」を分析し、その結果だけをクラウド上のトイレサーバーに送り、事前に連携しておいた端末に表示・記録するシステムです。
同じくパラマウントベッドが提供する見守り支援システム「眠りCONNECT(コネクト)」と連携が可能で、一つのユーザーインターフェースで、施設入居者の睡眠・覚醒状態などの見守りと、トイレの見守りを一目で確認することができます。



といった利用者の状態を、
一つのインターフェース上に表示できる。
文字だけでなく色付きのアイコン表示もされるため、
施設の職員は一目で状態が分かる。
写真は国際福祉機器展(H.C.R.)2025会場でのデモ画面
在宅介護の経験が、施設への「トイレDIARY」導入の発想を生んだ
トミオ印西コスモステラスのケアマネジャー曽我さんは、どのような想いでこのトイレ見守りシステムの導入を決めたのでしょうか。施設内の一室で、曽我さんに話を聞くことができました。
曽我さんの介護職員としての経歴をお教えください
もともと医療事務として病院に勤務していたときに、そこで働かれていた看護師さんが在宅向けの訪問介護ステーションを立ち上げることになり『手伝ってもらえないか?』と声をかけられたのがスタートです。
さらに訪問介護の管理者を担ってもらえないかという話になり、管理をするにしても現場のことが分からないと、と思って、私自身も資格を取ることにしたんです。まずはヘルパー2級※です。
そこでしばらく実務を経験しながら管理者もやっていて、ここまできたら介護福祉士も取りましょうか、ということで介護福祉士を取得したという経緯です。
※介護福祉の資格:介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)→介護職員実務者研修(旧ヘルパー1級)→介護福祉士(国家資格)というルートが標準的。介護の実務的な現場を担う福祉士に対して、その経験を元に、介護全体の計画を組み立てる専門家の資格がケアマネジャー。
その施設ではどのくらいの期間働かれたのですか?
14年間です。その中でケアマネジャーの資格も取得しました。最初は訪問介護だけだったのですが、途中からデイサービスの通常介護(施設介護)も始めるということで、その立ち上げから管理にも関わり、統括的に介護の現場を見ていました。あまり大きくない事業所だったので、施設の介護にも関わりながら、在宅の方々の介護もサポートして、管理もして、と忙しかったですね。
そのあとこのトミオ印西コスモステラスに?
そうです。こちらには最初からケアマネジャーとして入職しました。5年目になります。
ケアマネジャーとして入居者の方々のプランを立てて、というのがメインの業務ですが、週一回は現場に出ています。やはり現場に出て入居者様とコミュニケーションを取って得られる情報がとても重要ですし、何かあった時だけ話を聞く、というよりも普段から接していた方がやりやすいですね。実務にも携わりながら色んなことを考えたい、というのは私の性格だと思います。
介護ケア全体のことや、現場での実務を両方やられている中で、トイレDIARYを導入されたのには、どういうお考えがあったのでしょうか?
実はうちの施設(コスモステラス)では、睡眠計測センサー※の全室導入が先でした。睡眠計測センサーを導入してみて、これは職員にも入居者様にもメリットがある、ということが分かりました。そこでさらにこういうものがないかな? と自分で調べ始めたんです。
※睡眠計測センサー:パラマウントベッドが介護施設向けに提供する睡眠データ取得のためのセンサー。ベッドのマットレスの下に敷いたセンサーにより利用者の状態(心拍・呼吸・睡眠/覚醒/起き上がり/離床)を検知・計測する。非接触型センサーなので利用者が計測器などを身につける必要がない。(下写真がその画面)

睡眠計測センサーの情報を表示する画面。
職員の事務室のほか施設内の数カ所で確認が可能
睡眠計測センサーも曽我さんご自身でお調べになったのですか?
そうですね。私自身いろんな研修会や勉強会に出て、いろんな製品の勉強や情報交換をしていまして、例えば介護ロボットについても調べました。うちの介護職員も、新しい製品やサービスについて、何となく知ってはいるのですが、それをどういうふうに使うかとか、導入するにはどういう課題や方法があるのか、そういうのをきちんと考えるのは私の役目だなと思いまして。それで資料を作り説明会で周知して導入してもらいました。今年で導入3年目になります。
では睡眠計測センサーを導入してみた上で……
はい。その経験があったのでトイレDIARYの話を知った時にはすぐに自分でアプローチして調べて、「これはぜひ使ってみたい」と施設の代表に直接プレゼンテーションをしました。
睡眠計測センサーとトイレDIARY、どちらも導入の発想には、私が在宅介護(訪問介護)の経験が長かったことが関係していると思います。視点が在宅介護なんです。在宅介護の視点で物事を考えるんです。
施設介護と訪問介護では考え方が違うのでしょうか?
どちらも介護なので、本来は同じはずです。もちろん設備や関わる時間が違うので、実務的な違いはありますけど。
少し想像してみてください。例えば家にいる時と病院に入院している時では生活って違いますよね? それと似たようなことが在宅介護と施設介護ではあるんです。
「施設って生活の場なんです」
話せる範囲で結構ですので、具体的な例をお伺いしてもよろしいでしょうか?
ある入居者様にこう聞かれたことがあるんです。「わたしいつ退院できますか?」って。
はっとしました。老人ホームって生活の場、家なのになんでこう思わせたんだろう?ってすごく考えました。
例えば入居者様の状態を確認するために1日2回バイタル測定(心拍とか血圧など)を当時は取っていました。施設だと食事や色んな時間的な制約もあるし職員も忙しいので、早朝の決まった時間にバイタル測定を行っていたんです。人によってはまだ寝ていたい時間かもしれないのに、そういうルーティーンの決まり事があった。それって家での生活ではあまりないなあ、と思いました。かといって職員が、入居者様全員の「起きている・寝ている」を把握してそれに合わせて行動できるかというと、正直現実的ではありません。
なるほど。
それが睡眠計測センサーを入れて、入居者皆さんの睡眠・覚醒・起き上がりなどをモニターで確認できるようになって大きく変わったんです。それまでは夜中に毎時巡回をしてたんです。それだけで目を覚ます方だっています。今は入居者様の睡眠状況に応じて巡回のタイミングを合わせています。
実際に導入してみると、入居者様だけじゃなく、職員の負担も相当減りました。実務的な負担だけでなく、心理的にも相当助かりました。
バイタル測定についても同様で、「1日2回、定時にしましょう」という発想から、看護師さんとも相談しながら、入居者様の生活に合わせて適切なタイミングで行うようにしました。例えば入浴に合わせて、あるいは往診のときに、というふうに。
睡眠計測センサー導入によって、安全策的なルーティーン作業から、入居者さんの生活リズムに合わせたケアへと、発想が変えられたということですね
はい。その発想の延長で入居者様の「トイレ」のことも考えていたので、トイレDIARYを運営会社に提案をして導入をすることになりました。
トイレは生活という意味ですごく大事な要素ですし、入居者様の心理的な面を考えると導入すべきだと思いました。1年ほど前ですね、効果や課題などを精査して提案しました。今回は以前よりスムーズでした。たぶん睡眠計測センサーでの手応えというか効果が、現場にも運営会社にもあったからだと思います。
職員のみなさんの反応はどうでしたか?
最初は様々でした。そこで、私の考えだけで先走っても使う職員の意識が付いていかないといけないと思い、勉強会を開いたんです。トイレDIARYがどういうもので、何のために入れるのか、そしてどうやって使うのか。使うのは現場の人間なので、そこで誤解や反発があってはいけないと考えていました。直接インターネットで問い合わせをして、まずトイレDIARYの貸し出し用のデモ機を1台お借りしたんです。それを何ヶ所かで使ってみました。このときにお会いしたのが三重野さんです(トイレDIARYの開発者のパラマウントベッド株式会社 三重野勤さん、後述)。
そうやって「なぜこういうシステムを入れるのか」「実際にどういうことが起こるのか」の理解を丁寧に広げていった、という感じです。
(その2へつづく)


